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【解説・配点付き】2024年鹿児島大学医学部・物理の解答・解説

2024年の鹿児島大学医学部・物理の、
解答・解説【完全版】です。

方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。

このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。

目次

2024年鹿児島大学医学部物理
第1問 解答・解説

この記事の小問ごとの配点は鹿児島大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。

第1問は力学の問題です。
テーマは「斜方投射の $t$ 秒後の速度と位置、水平到達距離( $\sin2\theta$ の形にまとめ、 $15^\circ$ を $30^\circ$ にして数値計算)、同時に投げたボールと自由落下させたボールの衝突(モンキーハンティング)」。

問題

2024年鹿児島大学医学部物理 第1問 問題
2024年鹿児島大学医学部物理 第1問 問題
問題文をテキストで読む

図1のように水平な地面上で、水平と角度 $\theta\,(0^\circ<\theta<90^\circ)$ の向きに速さ $v_0$ でボールを投げた。重力加速度は鉛直下向きに大きさ $g$ として、以下の設問に答えよ。ただし、空気抵抗は無視するものとする。いずれの場合も点Oを原点とし、水平右向きを正として $x$ 軸を、鉛直上向きを正として $y$ 軸を定める。

必要があれば以下の三角関数の加法定理を用いてよい。

$\sin(\alpha\pm\beta)=\sin\alpha\cos\beta\pm\cos\alpha\sin\beta$、$\cos(\alpha\pm\beta)=\cos\alpha\cos\beta\mp\sin\alpha\sin\beta$

(1) 地面からボールを角度 $\theta$ の向きに速さ $v_0$ で投げた時、$t$ 秒後の点Aにおける速度 $\vec{v}=(v_x,\ v_y)$ と位置 $(x,\ y)$ を答えよ。ただし、$t$ 秒後の時点ではボールは一度も地面に達していない。

(2) 以下の設問には、導出過程も記述すること。

① 地面から角度 $\theta$ の向きに $v_0$ で投げた時の水平到達距離 $D=D_1$ を答えよ。

② この時、地面から角度 $\theta=15^\circ$ の向きに $v_0=49.0\ \mathrm{m/s}$ で投げた時の水平到達距離 $D=D_2$ を求めよ。ただし、重力加速度 $g$ の大きさは $9.8\ \mathrm{m/s^2}$ とし、有効数字2桁で答えよ。

次に、図2のように点Oにあるボールを地面と角度 $\theta$ の向きに速さ $v_0$ で投げ出すと同時に、点B $(L,\ H_1)$ から初速度ゼロで落下させたボールが点Pで衝突した。以下の設問に答えよ。

(3) 点Bの高さ $H_1$ を答えよ。なお、導出過程も記述すること。

解答の方針

【(1)(2)の方針】

着眼点

ボールにはたらく力は重力だけ(空気抵抗は無視するので、触れているものは無い)。水平方向には力がはたらかないので等速直線運動、鉛直方向は加速度 $-g$(上向き正)の投げ上げ。初速度を水平・鉛直に分けて $v_0\cos\theta$、 $v_0\sin\theta$ とし、水平と鉛直を別々に等加速度運動の式に入れれば、 $t$ 秒後の速度と位置がすぐに書ける(下の図)。(2)(3) はこの式に条件を入れるだけなので、最初に $t$ 秒後の速度と座標を全部書いておく。

2024年鹿児島大学医学部物理 第1問 解答の方針の図
2024年鹿児島大学医学部物理 第1問 解答の方針の図

地面に戻るまでの時間は鉛直方向だけで決まる。鉛直方向は投げ上げなので、同じ高さに戻ったときの鉛直の速度は $-v_0\sin\theta$(同じ大きさで逆向き)。(1) の $v_y$ をこれと等しいとおけば、滞空時間がすぐに求まる。水平到達距離は、水平の速さ×滞空時間。

$2\sin\theta\cos\theta$ は、与えられた加法定理で $\beta=\alpha$ とおいた $\sin2\theta$ にまとめておく。こうしておくと、② の $\theta=15^\circ$ は $\sin30^\circ=\dfrac12$ になり、計算がすぐ終わる。

  1. 右向き( $x$ 軸)・上向き( $y$ 軸)を正とし、水平は加速度0、鉛直は加速度 $-g$ として、等加速度運動の速度の式と変位の式を成分ごとに書く。
  2. 地面に戻るまでの時間を $\tau$ とし、 $v_y=-v_0\sin\theta$ とおいて $\tau$ を求める。水平方向の等速から $D_1=v_0\cos\theta\cdot\tau$ を求め、加法定理で $2\sin\theta\cos\theta=\sin2\theta$ にまとめる。
  3. $D_1$ の式に $v_0=49.0\ \mathrm{m/s}$、 $2\theta=30^\circ$、 $g=9.8\ \mathrm{m/s^2}$ を代入して $D_2$ を求める。

【(3)の方針】

着眼点

2つのボールが同時に動き始めるので、(1) と同じようにボールごとに $t$ 秒後の座標を書く。点Bのボールは初速度0の自由落下で、水平方向には動かないので $x$ 座標は $L$ のまま(0にしない)。衝突するとは、同じ時刻に $x$ 座標も $y$ 座標も一致すること。投げたボールの $x$ 座標が $L$ になる時刻は水平方向だけで決まるので、その時刻を2つの $y$ 座標に入れて等しいとおく。

このとき、2つの $y$ 座標には同じ $-\dfrac12gt^2$ が入っていて打ち消し合う。理由は、2つのボールが同じ加速度 $g$ で落ちるから。重力が無ければ、投げたボールは直線OBの上をまっすぐ進む。実際には時刻 $t$ までに $\dfrac12gt^2$ だけ下にずれるが、Bのボールも同じ時刻に同じ $\dfrac12gt^2$ だけ落ちる。ずれ方が同じなので、最初にBを狙って投げれば、Bの真下で必ず当たる(下の図)。よって答えは「点Bが点Oから見て角 $\theta$ の向きにある」という形になる。

2024年鹿児島大学医学部物理 第1問 解答の方針の図
2024年鹿児島大学医学部物理 第1問 解答の方針の図
  1. 投げたボールの座標は (1) の式。Bのボールの座標は $x_{\mathrm B}=L$、 $y_{\mathrm B}=H_1-\dfrac12gt^2$。
  2. 投げたボールの $x$ 座標が $L$ になる時刻 $t_1$ を求める。
  3. 時刻 $t_1$ の2つの $y$ 座標を等しいとおき、 $\dfrac12gt_1^{\,2}$ を消して $H_1$ を求める。

解答

2024年鹿児島大学医学部物理 第1問 解答・解説
2024年鹿児島大学医学部物理 第1問 解答・解説
解答をテキストで読む

(1)

右向き( $x$ 軸)・上向き( $y$ 軸)を正とする。ボールにはたらく力は重力だけなので、水平方向は加速度0の等速直線運動、鉛直方向は加速度 $-g$ の等加速度運動(投げ上げ)。初速度の成分は $(v_0\cos\theta,\ v_0\sin\theta)$。成分ごとに等加速度運動の速度の式を使うと

$$v_x=v_0\cos\theta,\qquad v_y=v_0\sin\theta-gt$$

答 $\vec v=(v_0\cos\theta,\ v_0\sin\theta-gt)$(5点)

原点Oから出発するので、成分ごとに等加速度運動の変位の式を使うと

$$x=v_0\cos\theta\cdot t,\qquad y=v_0\sin\theta\cdot t-\frac12gt^2$$

答 $(x,\ y)=\left(v_0\cos\theta\cdot t,\ v_0\sin\theta\cdot t-\dfrac12gt^2\right)$(5点)

(2)①

地面に戻るまでの時間を $\tau$ とする。鉛直方向は投げ上げなので、同じ高さ(地面)に戻ったときの鉛直の速度は、投げたときと同じ大きさで逆向きの $-v_0\sin\theta$。(1) の $v_y$ の式より

$$-v_0\sin\theta=v_0\sin\theta-g\tau\qquad\therefore\ \tau=\frac{2v_0\sin\theta}{g}$$

水平方向は速度 $v_0\cos\theta$ の等速直線運動なので、水平到達距離は

$$D_1=v_0\cos\theta\cdot\tau=\frac{2v_0^{\,2}\sin\theta\cos\theta}{g}$$

加法定理 $\sin(\alpha+\beta)=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta$ で $\alpha=\beta=\theta$ とおくと $\sin2\theta=2\sin\theta\cos\theta$ なので

$$D_1=\frac{v_0^{\,2}\sin2\theta}{g}$$

答 $D_1=\dfrac{v_0^{\,2}\sin2\theta}{g}$( $\dfrac{2v_0^{\,2}\sin\theta\cos\theta}{g}$ と同じ)(12点)

(2)②

① の式に $v_0=49.0\ \mathrm{m/s}$、 $\theta=15^\circ$( $2\theta=30^\circ$)、 $g=9.8\ \mathrm{m/s^2}$ を代入する。

$$D_2=\frac{49.0^2\times\sin30^\circ}{9.8}=\frac{49.0^2}{9.8}\times\frac12=245\times\frac12=122.5$$

有効数字2桁にして

答 $D_2=1.2\times10^{2}\ \mathrm{m}$(8点)

( $\sin2\theta$ にまとめてあるので、 $\sin15^\circ$ や $\cos15^\circ$ の値を求める必要はない)

(3)

点Bのボールは初速度0で落下するので、鉛直方向は加速度 $-g$ の等加速度運動。水平方向には動かないので、 $x$ 座標は $L$ のまま。投げたボールの座標は (1) の式。 $t$ 秒後の座標をボールごとに書くと

投げたボール: $x=v_0\cos\theta\cdot t$ 、 $y=v_0\sin\theta\cdot t-\dfrac12gt^2$

Bのボール: $x_{\mathrm B}=L$ 、 $y_{\mathrm B}=H_1-\dfrac12gt^2$

衝突するのは、同じ時刻に $x$ 座標と $y$ 座標がともに一致するとき。投げたボールの $x$ 座標が $L$ になる時刻を $t_1$ とすると

$$v_0\cos\theta\cdot t_1=L\qquad\therefore\ t_1=\frac{L}{v_0\cos\theta}$$

この時刻に $y$ 座標が一致するので

$$v_0\sin\theta\cdot t_1-\frac12gt_1^{\,2}=H_1-\frac12gt_1^{\,2}$$

両辺の $\dfrac12gt_1^{\,2}$ が消えて

$$H_1=v_0\sin\theta\cdot t_1=v_0\sin\theta\cdot\frac{L}{v_0\cos\theta}=L\tan\theta$$

答 $H_1=L\tan\theta$(20点)

$\tan\theta=\dfrac{H_1}{L}$ なので、点Bは点Oから見て角 $\theta$ の向きにある。2つのボールは同じ加速度 $g$ で落ちるので、点Bに向けて投げれば、初速の大きさ $v_0$ によらず衝突する(ただし $v_0$ が小さすぎると、Bの真下に届く前に地面に落ちる)。

別解

(2)①

地面に戻る条件を位置で立ててもよい。(1) の $y$ の式で $t=\tau$ のとき $y=0$ とおくと

$$v_0\sin\theta\cdot\tau-\frac12g\tau^2=0\qquad\therefore\ \tau=\frac{2v_0\sin\theta}{g}\quad(\tau>0)$$

( $\tau=0$ は投げた瞬間)。最高点( $v_y=0$)までの時間 $\dfrac{v_0\sin\theta}{g}$ の2倍としても同じ。

(3)

落ちるBのボールに乗って見てもよい(名問の森 力学 問題1 の最後の小問と同じ)。2つのボールはどちらも同じ加速度 $g$ で落ちるので、Bから見た投げたボールの相対加速度は $(-g)-(-g)=0$。Bのボールは最初止まっているので、Bから見た投げたボールの相対初速度は、Oから角 $\theta$ の向きに大きさ $v_0$ のまま。よってBから見ると、投げたボールは角 $\theta$ の向きに速さ $v_0$ の等速直線運動をする(下の図)。これがBに当たるのは、点Bが点Oから見て角 $\theta$ の向きにあるとき。

$$\tan\theta=\frac{H_1}{L}\qquad\therefore\ H_1=L\tan\theta$$

当たるまでの時間は、距離 $\mathrm{OB}=\sqrt{L^2+H_1^{\,2}}$ を速さ $v_0$ で割った $\dfrac{\sqrt{L^2+H_1^{\,2}}}{v_0}$。 $\cos\theta=\dfrac{L}{\sqrt{L^2+H_1^{\,2}}}$ なので、本解の $t_1=\dfrac{L}{v_0\cos\theta}$ と一致する。

出題意図

(1) 斜方投射を水平方向(等速)と鉛直方向(投げ上げ)に分けて、 $t$ 秒後の速度と位置を書けるか

(2) 地面に戻るまでの時間を鉛直方向だけで求め、水平到達距離を $\sin2\theta$ の形にまとめて数値計算に使えるか

(3) 同時に動き始めた2つのボールの衝突を「同じ時刻に $x$ 座標と $y$ 座標がともに一致する」と捉えることができるか

講評

難易度やや簡単
目標得点50点
目標時間12分

この大問は超典型問題。
(1)(2)① は良問の風にも載っている型で、水平到達距離は「地面に戻るまでの時間を求めて、水平方向の式に代入する」という典型の流れで求まる。
(2)② と (3) は (1) の式に代入するだけで、(3) も2つのボールの $y$ 座標に同じ $\dfrac12gt^2$ が入って消える。
鹿大の物理は差がつかない科目なので、ここでの符号ミスや有効数字の書き忘れが、そのまま合否に響く。
12分で50点を取り切り、落ち着いて後半に進もう。

差がつく所・失点しやすい所

  • (3):衝突を「同じ時刻に $x$ 座標と $y$ 座標がともに一致する」と捉えられるか。Bのボールの $x$ 座標を $L$ のまま書けば、あとは $\dfrac12gt_1^{\,2}$ が消えるだけ。Bの $x$ 座標を0と書く、2つのボールの時刻を別々の文字にする、といった書き方をすると式が立たない。
  • (2)②:① を $\sin2\theta$ にまとめておけるか。 $\sin15^\circ\cos15^\circ$ のまま計算しようとすると、加法定理で $\sin15^\circ=\dfrac{\sqrt6-\sqrt2}{4}$ などを求めることになり、時間がかかるうえに計算ミスも起きやすい。

コラム モンキーハンティング:狙えば必ず当たる理由

(3) は「モンキーハンティング」と呼ばれる有名な問題。枝のサルを狙って撃った瞬間にサルが手を離しても、弾は必ずサルに当たる、という話から来た名前で、この大問ではサルが点Bのボール、弾が点Oから投げたボールにあたる。なぜ当たるかは、(1) で書いた式を見れば分かる。投げたボールの高さは $y=v_0\sin\theta\cdot t-\dfrac12gt^2$ 、Bのボールの高さは $H_1-\dfrac12gt^2$ 。どちらにも同じ $-\dfrac12gt^2$ が付いているので、2つの高さを等しいとおくと、この項は両辺から消える。残るのは $v_0\sin\theta\cdot t=H_1$ で、これは「重力が無いとしたら、投げたボールがBの最初の位置に届く」という式そのもの。つまり、Bを狙って投げさえすれば、重力の大きさにも $v_0$ の大きさにも関係なく当たる( $v_0$ が小さいと、当たる前に地面に着くことはある)。同じことを落ちるBから見ると、投げたボールの加速度は消えて、角 $\theta$ の向きにまっすぐ自分へ向かってくる(別解の図)。ここから言える一般の型は、「同じ加速度で動く2物体は、片方から見ると加速度が消える」。重力だけで動く2物体の問題は、これで答えの見当がすぐつく。ただし、片方が床や壁ではね返る、空気の抵抗を受けるなど、加速度がそろわない場合はこの見方は使えない。答えの見当をつけたら、本解のように $t$ 秒後の座標を全部書いて確かめよう。名問の森 力学 問題1も同じ流れで解ける。

2024年鹿児島大学医学部物理
第2問 解答・解説

第2問は熱力学の問題です。
テーマは「定積2本と定圧2本でできた長方形のサイクル( $p_2=2p_1$ 、 $V_2=5V_1$ )。区間ごとに $Q$ ・ $\varDelta U$ ・ $W$ の表を作り、仕事を p-V 図の面積で、熱を定積は $Q=\varDelta U$ ・定圧は 5:3:2 の比で埋め、吸熱の区間だけを足した $Q_{\mathrm{in}}$ から熱効率 $\dfrac{8}{43}$ を求める」。

問題

2024年鹿児島大学医学部物理 第2問 問題
2024年鹿児島大学医学部物理 第2問 問題
問題文をテキストで読む

滑らかに動くピストンを使って $n\,[\mathrm{mol}]$ の単原子分子理想気体(以下、気体とする)をシリンダーに封じ込め、図1のような状態変化A→B→C→D→Aを1サイクルとする熱機関をつくった。ただし、気体の定積モル比熱は $C_{\mathrm{V}}=\dfrac{3}{2}R$、定圧モル比熱は $C_{\mathrm{P}}=\dfrac{5}{2}R$、($R$ は気体定数)とする。また、温度は全て絶対温度とする。最初Aの状態の温度が $T_{\mathrm{A}}$ とするとき、B→C→Dおよび1サイクルを経てAに戻ったときの温度を $T_{\mathrm{B}}$、$T_{\mathrm{C}}$、$T_{\mathrm{D}}$ および $T_{\mathrm{A}}{}’$ とする。このとき、$T_{\mathrm{B}}$、$T_{\mathrm{C}}$、$T_{\mathrm{D}}$ および $T_{\mathrm{A}}{}’$ を $T_{\mathrm{A}}$、$p_1$、$p_2$、$V_1$、$V_2$ を用いて示すと、ボイル・シャルルの法則より、以下のように求められる。

$$T_{\mathrm{B}}=\dfrac{p_2}{p_1}T_{\mathrm{A}},\quad T_{\mathrm{C}}=\dfrac{V_2}{V_1}\dfrac{p_2}{p_1}T_{\mathrm{A}},\quad T_{\mathrm{D}}=\dfrac{V_2}{V_1}T_{\mathrm{A}},\quad T_{\mathrm{A}}{}’=T_{\mathrm{A}}$$

$p_2=2p_1$、$V_2=5V_1$ として、以下の設問に答えよ。

(1) A→B、B→C、C→D、D→Aの過程で、気体が外部に対して行った仕事、$W_{\mathrm{AB}}$、$W_{\mathrm{BC}}$、$W_{\mathrm{CD}}$、$W_{\mathrm{DA}}$ を $n$、$R$、$T_{\mathrm{A}}$ を用いて示せ。また、1サイクルの間に、気体が外部に対して行った仕事の総和 $W_{\mathrm{all}}$ を求めよ。なお、導出過程も記述すること。

(2) A→B、B→C、C→D、D→Aの過程で、気体が外部より得た熱、$Q_{\mathrm{AB}}$、$Q_{\mathrm{BC}}$、$Q_{\mathrm{CD}}$、$Q_{\mathrm{DA}}$ を $n$、$R$、$T_{\mathrm{A}}$ を用いて示せ。ただし、気体が外部から熱を「吸収」した場合を正、「放出」した場合を負とする。また、1サイクルの間に、気体が外部から吸収した熱の総量 $Q_{\mathrm{in}}$ を求めよ。なお、導出過程も記述すること。

(3) 気体が外部より吸収した熱に対する、気体が外部に対して行った仕事の割合 $e$ をその熱機関の熱効率とよぶ。この熱効率 $e$ を求めよ。

解答の方針

着眼点

図1は長方形なので、A→B と C→D は縦の辺で体積が変わらない定積変化、B→C と D→A は横の辺で圧力が変わらない定圧変化。区間が4つあり、仕事も熱も区間ごとに全部聞かれるサイクルの問題なので、最初に区間ごとの表( $Q$ ・ $\varDelta U$ ・ $W$ )を書き、1区間ずつ埋めていく。(1)(2) の答えはすべてこの表の中に並び、表が埋まれば (3) は割るだけになる。

各点の温度は、状態方程式で $n$ と $R$ が一定なので $T\propto pV$ (縦軸と横軸の目盛りのかけ算)で決まり、問題文にも書いてある。 $p_2=2p_1$ 、 $V_2=5V_1$ を入れると $T_{\mathrm B}=2T_{\mathrm A}$ 、 $T_{\mathrm C}=10T_{\mathrm A}$ 、 $T_{\mathrm D}=5T_{\mathrm A}$ (下の図)。

2024年鹿児島大学医学部物理 第2問 解答の方針の図
2024年鹿児島大学医学部物理 第2問 解答の方針の図

表の3つの列は、それぞれ次のように決まる。

  • $W$ の列:仕事は p-V 図の面積。縦の辺(定積)は0、横の辺(定圧)は $p\varDelta V$ で、右へ動く(膨張)なら正、左へ動く(圧縮)なら負。答えは $n$ 、 $R$ 、 $T_{\mathrm A}$ で表すので、状態Aの状態方程式 $p_1V_1=nRT_{\mathrm A}$ で $p_1V_1$ を $nRT_{\mathrm A}$ に直す。
  • $\varDelta U$ の列:どの区間も $\varDelta U=nC_{\mathrm{V}}\varDelta T=\dfrac32nR\varDelta T$ ( $\varDelta T$ は「後−前」)。
  • $Q$ の列:定積の行は $W=0$ なので $Q=\varDelta U$ 。定圧の行は、単原子分子の定圧変化なので $Q:\varDelta U:W=5:3:2$ 。 $W$ の列が先に埋まっているので、 $Q=\dfrac52W$ と比で求まる。

吸熱の区間は、 $Q$ の符号を $\varDelta U$ と $W$ の符号から決めて見分ける。A→B は温度が上がり( $\varDelta U>0$ )仕事は0、B→C は温度が上がり( $\varDelta U>0$ )膨張もする( $W>0$ )ので、どちらも $Q>0$ =吸熱。C→D と D→A は温度が下がり( $\varDelta U<0$ )、D→A は圧縮もされる( $W<0$ )ので放熱。 $Q_{\mathrm{in}}$ は吸熱の2区間だけの和。4つ全部の和は、1サイクルで $\varDelta U=0$ なので $W_{\mathrm{all}}$ と同じ値になり、「吸収した熱の総量」にはならない。

  1. 区間 A→B、B→C、C→D、D→A を行に、 $Q$ ・ $\varDelta U$ ・ $W$ を列にした表を書く。行の頭に変化の名前(定積・定圧)と温度の変化( $T_{\mathrm A}\to2T_{\mathrm A}$ など)を書き、最後に1サイクルの行を作る。
  2. $W$ の列を埋める。定積の行は0、定圧の行は $p\varDelta V$ を $p_1V_1=nRT_{\mathrm A}$ で $nRT_{\mathrm A}$ の式に直す。縦に足して $W_{\mathrm{all}}$ ((1))。
  3. $\varDelta U$ の列を $\dfrac32nR\varDelta T$ で埋める。
  4. $Q$ の列を埋める。定積の行は $Q=\varDelta U$ 、定圧の行は 5:3:2 で $Q=\dfrac52W$ ((2))。
  5. 1サイクルの行で、 $Q$ の列の和が $W_{\mathrm{all}}$ と一致する( $\varDelta U$ の和は0)ことを確かめる。 $Q>0$ の2行(A→B、B→C)だけを足して $Q_{\mathrm{in}}$ ((2))。
  6. $e=\dfrac{W_{\mathrm{all}}}{Q_{\mathrm{in}}}$ に入れる((3))。

解答

2024年鹿児島大学医学部物理 第2問 解答・解説
2024年鹿児島大学医学部物理 第2問 解答・解説
2024年鹿児島大学医学部物理 第2問 解答・解説(続き)
2024年鹿児島大学医学部物理 第2問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

表を作る

区間が4つあるサイクルなので、第一法則 $Q=\varDelta U+W$ ( $Q$ は吸収した熱、 $W$ は気体がした仕事。どちらも符号つき)を区間ごとに並べた表を最初に書く。A→B と C→D は体積が変わらない定積変化、B→C と D→A は圧力が変わらない定圧変化。各点の温度は、問題文の式に $p_2=2p_1$ 、 $V_2=5V_1$ を入れて $T_{\mathrm B}=2T_{\mathrm A}$ 、 $T_{\mathrm C}=10T_{\mathrm A}$ 、 $T_{\mathrm D}=5T_{\mathrm A}$ 。

区間変化$Q$$\varDelta U$$W$
A→B定積 $T_{\mathrm A}\to2T_{\mathrm A}$
B→C定圧 $2T_{\mathrm A}\to10T_{\mathrm A}$
C→D定積 $10T_{\mathrm A}\to5T_{\mathrm A}$
D→A定圧 $5T_{\mathrm A}\to T_{\mathrm A}$
1サイクル

この表を $W$ の列((1))→ $\varDelta U$ の列 → $Q$ の列((2))の順に埋めていく。

(1) (表の $W$ の列)

仕事は p-V 図の面積で求める。A→B と C→D は定積変化なので、気体は仕事をしない。

答 $W_{\mathrm{AB}}=0$(3点)

答 $W_{\mathrm{CD}}=0$(3点)

B→C は圧力 $p_2$ のままの定圧変化で、体積が $V_1$ から $V_2$ に増える(膨張する)ので、仕事は正で

$$W_{\mathrm{BC}}=p_2(V_2-V_1)=2p_1\cdot4V_1=8p_1V_1$$

状態Aの状態方程式 $p_1V_1=nRT_{\mathrm A}$ で書きかえて

答 $W_{\mathrm{BC}}=8nRT_{\mathrm A}$(4点)

D→A は圧力 $p_1$ のままの定圧変化で、体積が $V_2$ から $V_1$ に減る(圧縮される)ので、仕事は負で

$$W_{\mathrm{DA}}=p_1(V_1-V_2)=p_1\cdot(-4V_1)=-4p_1V_1$$

答 $W_{\mathrm{DA}}=-4nRT_{\mathrm A}$(4点)

1サイクルの仕事の総和は、 $W$ の列を縦に足して

$$W_{\mathrm{all}}=W_{\mathrm{AB}}+W_{\mathrm{BC}}+W_{\mathrm{CD}}+W_{\mathrm{DA}}=0+8nRT_{\mathrm A}+0-4nRT_{\mathrm A}$$

答 $W_{\mathrm{all}}=4nRT_{\mathrm A}$(4点)

(B→C の下の面積から D→A の下の面積を引いた残りが、サイクルが囲む長方形の面積 $(p_2-p_1)(V_2-V_1)=p_1\cdot4V_1=4nRT_{\mathrm A}$ 。時計回りのサイクルなので正。下の図)

(2) (表の $\varDelta U$ の列と $Q$ の列)

内部エネルギーの変化は、どの区間も $\varDelta U=nC_{\mathrm{V}}\varDelta T=\dfrac32nR\varDelta T$ ( $\varDelta T$ は「後−前」)。

$$\varDelta U_{\mathrm{AB}}=\frac32nR(2T_{\mathrm A}-T_{\mathrm A})=\frac32nRT_{\mathrm A},\qquad \varDelta U_{\mathrm{BC}}=\frac32nR(10T_{\mathrm A}-2T_{\mathrm A})=12nRT_{\mathrm A}$$

$$\varDelta U_{\mathrm{CD}}=\frac32nR(5T_{\mathrm A}-10T_{\mathrm A})=-\frac{15}{2}nRT_{\mathrm A},\qquad \varDelta U_{\mathrm{DA}}=\frac32nR(T_{\mathrm A}-5T_{\mathrm A})=-6nRT_{\mathrm A}$$

次に $Q$ の列。A→B は定積変化なので $W_{\mathrm{AB}}=0$ で、吸収した熱はすべて内部エネルギーの増加になる。

$$Q_{\mathrm{AB}}=\varDelta U_{\mathrm{AB}}+0=\frac32nRT_{\mathrm A}$$

答 $Q_{\mathrm{AB}}=\dfrac32nRT_{\mathrm A}$(4点)

B→C は単原子分子の定圧変化なので $Q:\varDelta U:W=5:3:2$ 。 $W_{\mathrm{BC}}$ は (1) で求まっているので

$$Q_{\mathrm{BC}}=\frac52W_{\mathrm{BC}}=\frac52\times8nRT_{\mathrm A}=20nRT_{\mathrm A}$$

答 $Q_{\mathrm{BC}}=20nRT_{\mathrm A}$(5点)

(確かめ:表の行を横に足すと $\varDelta U_{\mathrm{BC}}+W_{\mathrm{BC}}=12nRT_{\mathrm A}+8nRT_{\mathrm A}=20nRT_{\mathrm A}$ で一致する。 $12:8=3:2$ も 5:3:2 のとおり)

C→D は定積変化なので

$$Q_{\mathrm{CD}}=\varDelta U_{\mathrm{CD}}+0=-\frac{15}{2}nRT_{\mathrm A}$$

答 $Q_{\mathrm{CD}}=-\dfrac{15}{2}nRT_{\mathrm A}$(4点)

D→A は定圧変化なので、同じく 5:3:2 で

$$Q_{\mathrm{DA}}=\frac52W_{\mathrm{DA}}=\frac52\times(-4nRT_{\mathrm A})=-10nRT_{\mathrm A}$$

答 $Q_{\mathrm{DA}}=-10nRT_{\mathrm A}$(5点)

( $Q_{\mathrm{CD}}$ 、 $Q_{\mathrm{DA}}$ は負=熱を放出している。問題の決まりどおり負のまま答える)

これで表が埋まる(値はすべて $nRT_{\mathrm A}$ を単位とする)。

区間変化$Q$$\varDelta U$$W$
A→B定積 $T_{\mathrm A}\to2T_{\mathrm A}$$\dfrac32$ 吸熱$\dfrac32$$0$
B→C定圧 $2T_{\mathrm A}\to10T_{\mathrm A}$$20$ 吸熱$12$$8$
C→D定積 $10T_{\mathrm A}\to5T_{\mathrm A}$$-\dfrac{15}{2}$ 放熱$-\dfrac{15}{2}$$0$
D→A定圧 $5T_{\mathrm A}\to T_{\mathrm A}$$-10$ 放熱$-6$$-4$
1サイクル温度が もとに戻る$4$$0$$4$

(検算:1サイクルでは温度がもとに戻るので $\varDelta U$ の列の和は0。 $Q$ の列の和 $\dfrac32+20-\dfrac{15}{2}-10=4$ は、 $W$ の列の和 $W_{\mathrm{all}}=4nRT_{\mathrm A}$ と一致する)

1サイクルの間に外部から吸収した熱の総量は、表で $Q>0$ の2行(吸熱の区間 A→B と B→C)の和(下の図)。

$$Q_{\mathrm{in}}=Q_{\mathrm{AB}}+Q_{\mathrm{BC}}$$

$$=\frac32nRT_{\mathrm A}+20nRT_{\mathrm A}$$

答 $Q_{\mathrm{in}}=\dfrac{43}{2}nRT_{\mathrm A}$(6点)

(1サイクルの行の $Q=4nRT_{\mathrm A}$ は、吸収と放出を差し引いた「正味の熱」。 $Q_{\mathrm{in}}$ (吸収した熱の総量)と取り違えない)

(3)

熱効率は、吸収した熱の総量に対する1サイクルの仕事の割合なので、(1)(2) の結果から

$$e=\frac{W_{\mathrm{all}}}{Q_{\mathrm{in}}}=\frac{4nRT_{\mathrm A}}{\ \dfrac{43}{2}nRT_{\mathrm A}\ }=\frac{8}{43}$$

答 $e=\dfrac{8}{43}$ ( $\fallingdotseq0.19$ )(8点)

(確かめ:放出した熱の大きさは $Q_{\mathrm{out}}=\dfrac{15}{2}nRT_{\mathrm A}+10nRT_{\mathrm A}=\dfrac{35}{2}nRT_{\mathrm A}$ なので $e=1-\dfrac{Q_{\mathrm{out}}}{Q_{\mathrm{in}}}=1-\dfrac{35}{43}=\dfrac{8}{43}$ 。0と1の間の値になっている)

別解

(2) の定圧の区間 (温度から $Q=nC_{\mathrm{P}}\varDelta T$ で) 温度が先に分かっているので、定圧モル比熱で直接求めてもよい。

$$Q_{\mathrm{BC}}=nC_{\mathrm{P}}(T_{\mathrm C}-T_{\mathrm B})=\frac52nR(10T_{\mathrm A}-2T_{\mathrm A})=20nRT_{\mathrm A},\qquad Q_{\mathrm{DA}}=\frac52nR(T_{\mathrm A}-5T_{\mathrm A})=-10nRT_{\mathrm A}$$

仕事を聞かれずに熱だけを聞かれたときは、こちらが速い。

(1) の仕事 (定圧の仕事を温度で) 定圧変化では $W=p\varDelta V=nR\varDelta T$ なので、 $W_{\mathrm{BC}}=nR(10T_{\mathrm A}-2T_{\mathrm A})=8nRT_{\mathrm A}$ 、 $W_{\mathrm{DA}}=nR(T_{\mathrm A}-5T_{\mathrm A})=-4nRT_{\mathrm A}$ 。

出題意図

(1) 長方形のサイクルで、仕事が定圧の区間だけで生じ、その符号が体積の増減で決まることを理解し、状態方程式で $nRT_{\mathrm A}$ の形に直すことができるか

(2) 定積変化と定圧変化の違いを踏まえて各区間の熱を求め、「吸収した熱の総量」を吸熱の区間だけの和として求めることができるか

(3) 熱効率の定義 $e=\dfrac{W_{\mathrm{all}}}{Q_{\mathrm{in}}}$ を正しく使えるか

講評

難易度やや簡単
目標得点50点
目標時間15分

定積変化と定圧変化だけでできた長方形のサイクルは、超典型的な熱サイクルの問題。
区間ごとに $Q$ ・ $\varDelta U$ ・ $W$ の表を書き、定圧の区間は 5:3:2 の比で埋めていけば、(1)(2) の答えが表の中にそのまま並び、(3) は割るだけになる。
熱力学は典型問題が出やすく、解法が単調になる分野なので、この表の解き方を身につけて、15分で50点を取り切りたい。
落とすとすれば、 $Q_{\mathrm{in}}$ に放熱の区間まで足す取り違えだけだ。

差がつく所・失点しやすい所

  • 差がつくとしたら (2) の $Q_{\mathrm{in}}$:吸熱の区間(A→B・B→C)を見分けて、その2つだけを足せるか。4つ全部を足すと $4nRT_{\mathrm A}$ (= $W_{\mathrm{all}}$ )になり、(3) の熱効率が1になってしまう。(3) は (2) ができていれば割るだけなので、ここを落とすと (3) も一緒に落とす。

コラム 長方形のサイクルは「温度・面積・吸熱の判定」の3つで解ける

p-V 図が長方形のサイクル(定積2本・定圧2本)は、熱力学の典型問題(竜文会の実践模試 熱力学総合⓪ 第3問は、圧力4倍・体積5倍にしただけのほぼ同じ形)。次の3つを順に行えば、どんな数値でも同じ手順で解ける。

  • ① 各点の温度は $pV$ のかけ算:状態方程式 $pV=nRT$ で $n$ と $R$ は一定なので、温度は $pV$ に比例する。最初の点の温度を基準に、縦軸と横軸の目盛りをかけた倍率で各点の温度を求め、p-V 図の点のそばに書く(この大問では問題文が与えている)。
  • ② 仕事は面積:縦の辺(定積)は0、横の辺(定圧)は $p\varDelta V$ で、右へ動けば正、左へ動けば負。1サイクルの仕事は囲む長方形の面積で、時計回りなら正。
  • ③ 吸熱の区間だけを足す:定積で温度が上がる辺と、定圧で膨張する辺が吸熱(時計回りの長方形では左の辺と上の辺。この大問では A→B と B→C)。熱は定積なら $nC_{\mathrm{V}}\varDelta T$ 、定圧なら $nC_{\mathrm{P}}\varDelta T$ 。熱効率は $e=\dfrac{W_{\mathrm{all}}}{Q_{\mathrm{in}}}$ で、分母の $Q_{\mathrm{in}}$ は吸熱の辺だけの和。

最後に「4つの熱の和=1サイクルの仕事」(1周すると温度が戻るので $\varDelta U=0$ )で検算すれば、符号やモル比熱の取り違えにすぐ気づける。この大問なら、4つの熱の和は $\left(\dfrac32+20-\dfrac{15}{2}-10\right)nRT_{\mathrm A}=4nRT_{\mathrm A}$ で、 $W_{\mathrm{all}}$ と一致する。受験生がいちばん落としやすいのは、この「4つの和」を $Q_{\mathrm{in}}$ と取り違える失点だ。そうすると熱効率は $\dfrac{4}{4}=1$ になり、熱を全部仕事に変える熱機関という、ありえない答えになる。正しくは吸熱の2辺だけの $Q_{\mathrm{in}}=\dfrac{43}{2}nRT_{\mathrm A}$ で割って $e=\dfrac{8}{43}\fallingdotseq0.19$ 。「熱効率は0と1の間か」も検算の1つにしよう。この3つと検算をセットにして、型として持っておこう。

2024年鹿児島大学医学部物理
第3問 解答・解説

第3問は波動の問題です。
テーマは「与えられた波の式から振幅・波長・周期・速さを読み、 $x=0$ の単振動の $y$-$t$ グラフを書く。向かい合う2つの波源から出た正弦波が出会った後の合成( $x=\lambda$ の変位の時間変化と、重なりが一部だけの合成波の $y$-$x$ グラフ)、十分時間がたった後の定常波の名称と特徴」。

問題

2024年鹿児島大学医学部物理 第3問 問題
2024年鹿児島大学医学部物理 第3問 問題
問題文をテキストで読む

ある媒質中に直線上に $x$ 軸をとり、$x$ 軸上に沿って正の向きに進む正弦波Aを考える。位置 $x\,[\mathrm{m}]$ における時刻 $t\,[\mathrm{s}]$ の変位 $y\,[\mathrm{m}]$ は式(1)で表される。

$$y=3.0\sin\left\{\pi\left(\dfrac{t}{2.0}-\dfrac{x}{5.0}\right)\right\}\qquad(1)$$

有効数字2桁として以下の設問に答えよ。

(1) 正弦波Aの振幅 $L$、波長 $\lambda$、周期 $T$、波の速さ $v$ を答えよ。

(2) $x=0\ \mathrm{m}$ における正弦波Aの波の式を示し、$y$-$t$ グラフを $-1\ \mathrm{s}\leqq t\leqq 5\ \mathrm{s}$ の範囲で示せ。

(3) 正弦波Aと同じ振幅 $L$、波長 $\lambda$、周期 $T$ を持ち、また正弦波Aと同じ速さ $v$ で逆向きに進む $x=2\lambda$ の地点を波源とする正弦波Bを考える。波のない穏やかな状態から、正弦波Aは原点Oから右方向に、正弦波Bは $2\lambda$ の位置にある波源から左方向に同時に波を発生させ、その後、波は継続的に発生し続けるものとする。正弦波A及び正弦波Bは、それぞれ1波長分だけ進んだとき、$x=\lambda$ の地点で初めて出合う。その時の時刻を $t=0\ \mathrm{s}$ とする。また、このとき正弦波A及び正弦波Bが図1の波形を持つ。$t>0\ \mathrm{s}$ において、$x=\lambda$ の位置における2つの正弦波の合成波を考える。その場合の $t=0\ \mathrm{s}$ から最初に最大振幅になるまでの時間と、最大振幅をそれぞれ $T$、$L$ を用いて示せ。またその時の合成波の $y$-$x$ グラフを示せ。

(4) 設問(3)において、時間が十分経過した後の $0\leqq x\leqq 2\lambda$ に生じる合成波には腹及び節と呼ばれる部分が発生する。この合成波の名称及びその特徴について述べよ。

解答の方針

【(1)(2)の方針】

着眼点

$x$ 軸の正の向きに進む正弦波の公式 $y=L\sin2\pi\left(\dfrac tT-\dfrac x\lambda\right)$ は、形を丸暗記するものではなく、自分で導くもの。原点が $y=L\sin\dfrac{2\pi}{T}t$ で単振動していると、その振動は速さ $v$ で伝わり、位置 $x$ には $\dfrac xv$ だけ遅れて届く。よって位置 $x$ の今の変位は $\dfrac xv$ 前の原点の変位で、 $t\to t-\dfrac xv$ とおけば $y=L\sin\dfrac{2\pi}{T}\left(t-\dfrac xv\right)=L\sin2\pi\left(\dfrac tT-\dfrac x\lambda\right)$ ( $vT=\lambda$ )になる。この意味が分かっていれば、式(1)も「原点の単振動を $\dfrac xv$ 遅らせた形」と読める。公式を展開した $L\sin\left(\dfrac{2\pi}{T}t-\dfrac{2\pi}{\lambda}x\right)$ と、式(1)の $3.0\sin\left(\dfrac{\pi}{2.0}t-\dfrac{\pi}{5.0}x\right)$ の係数を比べれば、振幅・周期・波長がそのまま読める。速さは $v=\dfrac\lambda T$。

$x=0$ の変位は、式(1)に $x=0$ を代入した単振動の式。 $t=0$ で0から上向きに動き始める sin 型で、周期 $4.0$ s ごとに同じ形をくり返す。範囲が $t=-1$ s から始まるので、 $t=0$ より $\dfrac T4$ 前の谷から書き始める。

  1. 原点の単振動に $t\to t-\dfrac xv$ を入れて正弦波の式を導き、展開して式(1)と係数を比べる。振幅 $L$、周期 $T$、波長 $\lambda$ を求め、 $v=\dfrac\lambda T$ で速さを求める。
  2. 式(1)に $x=0$ を代入して、原点の単振動の式を求める。
  3. $t=-1,\ 0,\ 1,\ \cdots,\ 5$ s の変位を求め、 $-1\leqq t\leqq5$ の $y$-$t$ グラフを書く。

【(3)の方針】

着眼点

波の先頭の点は、波源が振動し始めたときと同じ向きに動き始める。図1で、Aの先頭( $x=\lambda$)のすぐ左の変位も、Bの先頭( $x=\lambda$)のすぐ右の変位も正なので、A・Bどちらの波源も上向きに振動し始めたとわかる(下の図)。 $x=\lambda$ には $t=0$ にA・Bの先頭が同時に届くので、そこでは2つの波が同じ位相で重なり、振幅 $2L$ で上向きに振動し始める。

2024年鹿児島大学医学部物理 第3問 解答の方針の図
2024年鹿児島大学医学部物理 第3問 解答の方針の図

式で確かめるには、A・Bそれぞれの $y(x,t)$ を $y$-$t$ スタートで作る。 $t=0$ はAが出てからちょうど1周期後なので、原点の振動は (2) と同じ $L\sin\dfrac{2\pi t}{T}$ 。Bの波源 $x=2\lambda$ も上向きに振動し始めたので、同じ $L\sin\dfrac{2\pi t}{T}$ 。位置 $x$ には、Aは原点から距離 $x$ 、Bは波源から距離 $2\lambda-x$ だけ遅れて届く。

合成波の $y$-$x$ グラフは「その時の」= $t=\dfrac T4$ の形。 $\dfrac T4$ の間に、A・Bの先頭はそれぞれ $v\cdot\dfrac T4=\dfrac\lambda4$ 進む。先頭がまだ届いていない区間には、その波の式を使わない。A・Bが重なっているのは2つの先頭の間 $\dfrac34\lambda\leqq x\leqq\dfrac54\lambda$ だけで、その外はAだけ、またはBだけ。

  1. 図1の先頭のすぐ後ろの変位から、A・Bの波源がどちらも上向きに振動し始めたことを読む。
  2. Aは原点の振動 $L\sin\dfrac{2\pi t}{T}$ から、 $t\to t-\dfrac xv$ で $y_{\mathrm A}(x,t)$ を作る(先頭は $x=\lambda+vt$)。
  3. Bは波源 $x=2\lambda$ の振動 $L\sin\dfrac{2\pi t}{T}$ から、 $t\to t-\dfrac{2\lambda-x}{v}$ で $y_{\mathrm B}(x,t)$ を作る(先頭は $x=\lambda-vt$)。
  4. $x=\lambda$ を代入して合成波の変位の時間変化を求め、最初に最大になる時間と最大振幅を求める。
  5. $t=\dfrac T4$ を代入し、先頭の位置で区間を分けて、合成波の $y$-$x$ グラフを書く。

【(4)の方針】

着眼点

十分時間がたつと、A・Bの先頭はどちらも $0\leqq x\leqq2\lambda$ の外まで進み、区間全体で振幅・波長・周期が同じ2つの波が逆向きに重なる。これは定常波。 (3) で $x=\lambda$ は振幅 $2L$ で振動するとわかっているので、 $x=\lambda$ は腹。腹と節は $\dfrac\lambda4$ ずつ交互に並ぶので、作図で位置がすべて決まる。

  1. 合成波の名称(定常波)を答える。
  2. $x=\lambda$ が腹であることから、 $\dfrac\lambda4$ ずつ腹と節を並べる。
  3. 進まないこと、節は振動しないこと、腹は振幅 $2L$ で振動すること、節と腹の間隔が $\dfrac\lambda4$ であることを述べる。

解答

2024年鹿児島大学医学部物理 第3問 解答・解説
2024年鹿児島大学医学部物理 第3問 解答・解説
2024年鹿児島大学医学部物理 第3問 解答・解説(続き)
2024年鹿児島大学医学部物理 第3問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

(1)

原点の振動を、振幅 $L$ ・周期 $T$ の $y=L\sin\dfrac{2\pi}{T}t$ とすると、位置 $x$ には速さ $v$ で $\dfrac xv$ だけ遅れて届くので、 $t\to t-\dfrac xv$ として $y=L\sin\dfrac{2\pi}{T}\left(t-\dfrac xv\right)$ 。 $vT=\lambda$ より、 $x$ 軸の正の向きに進む正弦波の式と、それを展開した形は次のとおり。

$$y=L\sin2\pi\left(\frac tT-\frac x\lambda\right)=L\sin\left(\frac{2\pi}{T}t-\frac{2\pi}{\lambda}x\right)$$

式(1)は $y=3.0\sin\left(\dfrac{\pi}{2.0}t-\dfrac{\pi}{5.0}x\right)$ なので、係数を比べて

$$L=3.0,\qquad \frac{2\pi}{T}=\frac{\pi}{2.0}\ \ \therefore\ T=4.0,\qquad \frac{2\pi}{\lambda}=\frac{\pi}{5.0}\ \ \therefore\ \lambda=10$$

答(振幅 $L$) 3.0 m(2点)

答(波長 $\lambda$) 10 m(2点)

答(周期 $T$) 4.0 s(2点)

速さは

$$v=\frac{\lambda}{T}=\frac{10}{4.0}=2.5$$

答(速さ $v$) 2.5 m/s(2点)

(2)

式(1)に $x=0$ を代入すると

$$y=3.0\sin\left\{\pi\left(\frac{t}{2.0}-0\right)\right\}=3.0\sin\frac{\pi t}{2.0}$$

答(波の式) $y=3.0\sin\dfrac{\pi t}{2.0}$(5点)

振幅 $3.0$ m、周期 $4.0$ s で、 $t=0$ で0から上向きに動き始める sin 型。 $t=-1,\ 0,\ 1,\ 2,\ 3,\ 4,\ 5$ s での変位は $-3.0,\ 0,\ 3.0,\ 0,\ -3.0,\ 0,\ 3.0$ m( $t=-1$ s は $t=0$ の $\dfrac T4$ 前なので谷)。

答( $y$-$t$ グラフ) 上の図(7点)

(3)

図1で、Aの先頭のすぐ左( $x$ が $\lambda$ より少し小さい所)の変位も、Bの先頭のすぐ右( $x$ が $\lambda$ より少し大きい所)の変位も正である。波の先頭の点は波源が振動し始めた向きに動き始めるので、A・Bの波源はどちらも上向きに振動し始めた。

Aは $t=-T$ に原点から出始めたので、原点の変位は $L\sin\dfrac{2\pi(t+T)}{T}=L\sin\dfrac{2\pi t}{T}$ (1周期ずれても同じ)。位置 $x$ の変位は、 $\dfrac xv$ 秒前の原点の変位なので、 $t\to t-\dfrac xv$ として、 $vT=\lambda$ より

$$y_{\mathrm A}=L\sin2\pi\left(\frac tT-\frac x\lambda\right)\qquad(0\leqq x\leqq\lambda+vt)$$

(式(1)そのもの)。Bの波源 $x=2\lambda$ も $t=-T$ から上向きに振動し始めたので、波源の変位は $L\sin\dfrac{2\pi t}{T}$ 。位置 $x$ までの距離は $2\lambda-x$ なので、 $t\to t-\dfrac{2\lambda-x}{v}$ として

$$y_{\mathrm B}=L\sin2\pi\left(\frac tT-\frac{2\lambda-x}{\lambda}\right)=L\sin2\pi\left(\frac tT+\frac x\lambda\right)\qquad(\lambda-vt\leqq x\leqq2\lambda)$$

$t>0$ では $x=\lambda$ にA・Bの両方が届いているので、代入して

$$y=y_{\mathrm A}+y_{\mathrm B}=L\sin\left(\frac{2\pi t}{T}-2\pi\right)+L\sin\left(\frac{2\pi t}{T}+2\pi\right)=2L\sin\frac{2\pi t}{T}$$

A・Bが同じ位相で重なるので、振幅 $2L$ の単振動になる。 $t=0$ から上向きに動き始め、最初に最大になるのは $\dfrac{2\pi t}{T}=\dfrac\pi2$ のとき。

答(時間) $\dfrac T4$(5点)

答(最大振幅) $2L$(5点)

その時( $t=\dfrac T4$)、 $v\cdot\dfrac T4=\dfrac\lambda4$ より、Aの先頭は $x=\dfrac54\lambda$ 、Bの先頭は $x=\dfrac34\lambda$ にある。 $t=\dfrac T4$ を代入すると

$$y_{\mathrm A}=L\sin\left(\frac\pi2-\frac{2\pi x}{\lambda}\right)=L\cos\frac{2\pi x}{\lambda}\qquad\left(0\leqq x\leqq\frac54\lambda\right)$$

$$y_{\mathrm B}=L\sin\left(\frac\pi2+\frac{2\pi x}{\lambda}\right)=L\cos\frac{2\pi x}{\lambda}\qquad\left(\frac34\lambda\leqq x\leqq2\lambda\right)$$

先頭がまだ届いていない区間にはその波は無いので、合成波は区間ごとに

・$0\leqq x\leqq\dfrac34\lambda$(Aだけ): $y=L\cos\dfrac{2\pi x}{\lambda}$

・$\dfrac34\lambda\leqq x\leqq\dfrac54\lambda$(A・Bが重なる): $y=2L\cos\dfrac{2\pi x}{\lambda}$

・$\dfrac54\lambda\leqq x\leqq2\lambda$(Bだけ): $y=L\cos\dfrac{2\pi x}{\lambda}$

$L=3.0$ m、 $\lambda=10$ m なので、 $x=0,\ 2.5,\ 5.0,\ 7.5,\ 10,\ 12.5,\ 15,\ 17.5,\ 20$ m での変位は $3.0,\ 0,\ -3.0,\ 0,\ 6.0,\ 0,\ -3.0,\ 0,\ 3.0$ m。重なっている $7.5$ m〜 $12.5$ m だけが振幅 $6.0$ の山になり、その両端( $x=7.5$ m、 $12.5$ m)で線が折れ曲がる。

答(合成波の $y$-$x$ グラフ) 上の図(太線)(10点)

(4)

十分時間がたつと、 $0\leqq x\leqq2\lambda$ の全体で、振幅・波長・周期の等しい2つの正弦波A・Bが逆向きに進んで重なる。このときできる合成波は左右どちらにも進まない。

答(名称) 定常波(定在波)(4点)

(3) より $x=\lambda$ は振幅 $2L$ で振動するので腹。腹と節は $\dfrac\lambda4$ ずつ交互に並ぶので、腹は $x=0,\ \dfrac\lambda2,\ \lambda,\ \dfrac32\lambda,\ 2\lambda$ 、節は $x=\dfrac\lambda4,\ \dfrac34\lambda,\ \dfrac54\lambda,\ \dfrac74\lambda$ (下の図)。

答(特徴) 波形は左右どちらにも進まない。全く振動しない節と、振幅 $2L$ で最も大きく振動する腹が交互に並び、隣り合う節と腹の間隔は $\dfrac\lambda4$(節どうし・腹どうしの間隔は $\dfrac\lambda2$)。この問題では $x=0,\ \dfrac\lambda2,\ \lambda,\ \dfrac32\lambda,\ 2\lambda$ が腹、 $x=\dfrac\lambda4,\ \dfrac34\lambda,\ \dfrac54\lambda,\ \dfrac74\lambda$ が節(6点)

(教科書の「波の重ね合わせ・定常波」の知識。隣り合う節の間の媒質は同じ向きにそろって振動し、節をはさんだ隣の区間とは逆向きに振動する)

別解

(3) (作図で求める)  $x=\lambda$ にはA・Bの先頭が $t=0$ に同時に届き、どちらも上向きに振動し始める(着眼点の図)。同じ動きが重なるので、振幅 $2L$ で上向きに動き始め、 $\dfrac T4$ 後に最大 $2L$ になる。その時の波形は、図1のAの波形を右へ $\dfrac\lambda4$ 、Bの波形を左へ $\dfrac\lambda4$ ずらして重ねればよい。ずらしたAは $0\leqq x\leqq\dfrac54\lambda$ 、Bは $\dfrac34\lambda\leqq x\leqq2\lambda$ にあり(原点・ $2\lambda$ からは新しい波が出て続く)、重なる $\dfrac34\lambda\sim\dfrac54\lambda$ だけ変位を足すと、本解と同じグラフになる。

実際の試験では、このように時間を少しずつ進めながら(たとえば $\dfrac T8$ ずつ)A・Bの波形をずらして作図し、 $x=\lambda$ の変位が最大になる時刻を探して解いた受験生が多いと思われる。この問題は2つの先頭が $x=\lambda$ に同時に届く都合のよい値になっているので、作図でも答えが出る。ただし、先頭が同時に届かない場合や、途中の時刻の波形を式で聞かれる場合は、作図では手間がかかる。本解のように波の式で区間を分けて求める方法も書けるようにしておく。

(4) (式で求める) 十分時間がたった後は、 $0\leqq x\leqq2\lambda$ の全体で $y_{\mathrm A}$ ・ $y_{\mathrm B}$ の両方がある。和積の公式で

$$y=L\sin2\pi\left(\frac tT-\frac x\lambda\right)+L\sin2\pi\left(\frac tT+\frac x\lambda\right)=2L\cos\frac{2\pi x}{\lambda}\cdot\sin\frac{2\pi t}{T}$$

$x$ の入った部分 $2L\left|\cos\dfrac{2\pi x}{\lambda}\right|$ が位置 $x$ の振幅、 $t$ の入った部分が時間変化。振幅が0の節は $\cos\dfrac{2\pi x}{\lambda}=0$ より $x=\dfrac\lambda4,\ \dfrac34\lambda,\ \dfrac54\lambda,\ \dfrac74\lambda$ 、振幅が $2L$ の腹は $\cos\dfrac{2\pi x}{\lambda}=\pm1$ より $x=0,\ \dfrac\lambda2,\ \lambda,\ \dfrac32\lambda,\ 2\lambda$ 。 $x$ だけで決まる振幅の形が時間とともに伸び縮みするだけなので、波形は進まない。

出題意図

(1) 正弦波の式を導出できるか(原点の単振動が速さ $v$ で伝わり、位置 $x$ には $\dfrac xv$ だけ遅れて届く、という式の意味が分かっているか)。そのうえで、与えられた式と比べて振幅・波長・周期・速さを読み取ることができるか。

(2) 波の式に $x=0$ を代入して、原点の単振動の式と $y$-$t$ グラフを書けるか

(3) 図1から2つの波源の振動の始まり方を読み、波の先頭がどこまで来ているかを踏まえて合成波を求めることができるか

(4) 逆向きに進む2つの波の重ね合わせで定常波ができること、その特徴(進まない・節と腹)が理解できているか

講評

難易度標準
目標得点50点
目標時間20分

本解は、波の式で区間を分けて求める王道の解き方。
(3) は値が都合よく設定されているので、波を少しずつずらす作図でも答えは出る。
それでも、波の式は自由自在に扱えるようにしておきたい。
正弦波の式を原点の単振動から導けること、そして少なくとも (3) の解答くらいは自力で書けることを目標に、良問の風の波の式の問題で練習を積んでおこう。
鹿大の物理は差がつかない科目なので、ここでグラフ1つを落とすと、その分がそのまま合否に響く。

差がつく所・失点しやすい所

  • (3) の合成波の $y$-$x$ グラフ:その時( $t=\dfrac T4$)に重なっているのは $\dfrac34\lambda\leqq x\leqq\dfrac54\lambda$ だけ、という発想に行き着けるか。区間全体を振幅 $2L$ の定常波で書く誤りと、重なりの両端をなめらかにつなぐ誤りが起きやすい。この大問でいちばん差がつく所。
  • (1):正弦波の式を導出できるか。原点の単振動を $\dfrac xv$ 遅らせる、という意味から導ければ、式(1)と係数を比べるだけですぐに解ける。形だけを丸暗記していると、式(1)の $\pi\left(\dfrac{t}{2.0}-\dfrac{x}{5.0}\right)$ が公式のどこに当たるかで迷い、難しく感じる。
  • (3) の時間・最大振幅:図1の先頭のすぐ後ろの変位から、A・Bの波源がどちらも上向きに振動し始めた( $x=\lambda$ で同じ位相)と読めるか。これができればグラフの形も決まる。

コラム 合成波のグラフは「先頭の位置」から書く

2つの波が出会う問題で合成波のグラフを書くときに、まず決めるのはそれぞれの波の先頭がどこまで来ているかだ。波は先頭より先には存在しない。だから足し合わせるのは、2つの波が両方とも届いている区間だけになる。

この大問で、時刻ごとに合成波の形を並べると下の図のようになる(色の帯がA・Bの重なっている区間)。

2024年鹿児島大学医学部物理 第3問 コラムの図
2024年鹿児島大学医学部物理 第3問 コラムの図
  • $t=\dfrac T4$((3) のグラフ):A・Bの先頭は $x=\lambda$ からそれぞれ $\dfrac\lambda4$ 進んだだけ。重なりは $\dfrac34\lambda\sim\dfrac54\lambda$ の幅 $\dfrac\lambda2$ で、そこだけ山の高さが2倍になる。
  • $t=\dfrac34T$:先頭は $\dfrac34\lambda$ 進み、重なりは $\dfrac\lambda4\sim\dfrac74\lambda$ に広がる。重なりの中はすでに定常波の形になっている。
  • $t\geqq T$:先頭が $0$ と $2\lambda$ に達し、 $0\leqq x\leqq2\lambda$ の全体が定常波になる((4) の状態)。

定常波は、はじめから区間全体にできるのではない。2つの波が重なった所から定常波になり、重なりが広がるにつれて定常波の区間も広がる。反射波が壁から戻ってくる問題(良問の風74・名問の森61〔新しい版は63〕)でも、考え方はまったく同じ。「先頭はどこか」→「重なっている区間はどこか」→「その区間だけ足す」の3段で書けば、どんな時刻のグラフも正しく書ける。

2024年鹿児島大学医学部物理
第4問 解答・解説

第4問は電磁気の問題です。
テーマは「抵抗だけの回路で周波数・電流の最大値・平均の消費電力(グラフの読み取り)、抵抗とコンデンサーの直列回路で最大値どうしのオームの法則から電気容量、抵抗・コンデンサー・コイルの直列回路の共振(自己インダクタンス・インピーダンス・位相のずれ)と、共振からずらしたときの電流」。

問題

2024年鹿児島大学医学部物理 第4問 問題
2024年鹿児島大学医学部物理 第4問 問題
問題文をテキストで読む

図1のような交流回路を考える。ただし、点線で囲われた(a)の部分には導線、コンデンサー(静電容量 $C$)、コイル(自己インダクタンス $L$)などを接続するものとする。抵抗の抵抗値は $R=100\ \Omega$ とし、コイルや導線の抵抗は無視できるものとする。

以下では抵抗の両端の電圧を $V_{\mathrm{R}}$、(a)の両端の電圧を $V_{\mathrm{a}}$ とする。また、交流電源の電圧と周波数は自由に変化させることができる。電流 $I$ の向きは図の矢印の方向を正とする。以下解答は有効数字2桁で求めよ。

[実験Ⅰ] (a)に導線を接続して $V_{\mathrm{R}}$ を測定したところ、図2のような波形を得た。この波形は正弦波とみなせることがわかった。

(1) ① このときの交流電源の周波数を求めよ。

② このとき回路を流れる電流 $I$ の最大値を求めよ。

③ 抵抗での消費電力の1周期についての平均の値を求めよ。

[実験Ⅱ] (a)にコンデンサーを接続し、交流電源の電圧を変化させた。周波数は[実験Ⅰ]から変化させなかった。

(2) $V_{\mathrm{a}}$ の最大値は $10\ \mathrm{V}$、$V_{\mathrm{R}}$ の最大値は $2.0\ \mathrm{V}$ であった。コンデンサーの静電容量 $C\,[\mathrm{F}]$ を求めよ。なお、導出過程も記述すること。

[実験Ⅲ] (a)に静電容量 $C=5.0\times10^{-6}\ \mathrm{F}$ のコンデンサーとコイルを直列に接続した。

(3) 交流電源の周波数を変化させていくと、$f=2000\ \mathrm{Hz}$ が回路の共振周波数であることがわかった。挿入したコイルの自己インダクタンス $L\,[\mathrm{H}]$ と回路のインピーダンス $Z\,[\Omega]$ を求めよ。また、この共振周波数において回路を流れる電流の電圧に対する位相のずれ $\delta\,[\mathrm{rad}]$ を求めよ。なお、導出過程も記述すること。

(4) 交流電源の周波数を共振周波数から変化させたとき、回路を流れる電流 $I$ の最大値は増加するか、減少するか答えよ。またその理由を説明せよ。

解答の方針

【(1)の方針】

着眼点

(a) が導線なので、回路は抵抗だけ。抵抗の電圧と電流は位相がそろっていて、最大値どうしでオームの法則が成り立つ。周期と最大値は図2から読める(周期 $0.02\ \mathrm{s}$、最大値 $14.1\ \mathrm{V}$)。平均の消費電力は、最初から実効値(最大値の $\dfrac{1}{\sqrt2}$ 倍。ざっくり言えば「平均」、正確には2乗の平均の平方根)を入れて $R{I_{\mathrm e}}^2$ で求める。

  1. 図2から周期 $T=0.02\ \mathrm{s}$ を読み、 $f=\dfrac1T$ で周波数を求める。
  2. 電圧の最大値 $14.1\ \mathrm{V}$ を $R$ で割って、電流の最大値 $I_0$ を求める。
  3. 電流の実効値 $\dfrac{I_0}{\sqrt2}$ を使って、 $\bar P=R\left(\dfrac{I_0}{\sqrt2}\right)^2$ を求める。

【(2)の方針】

着眼点

抵抗とコンデンサーは直列なので、流れる電流が共通。交流は「最大値」と「位相」を別々に考える。最大値どうしなら、抵抗は $R$、コンデンサーはリアクタンス $\dfrac{1}{\omega C}$ を抵抗のように見て、オームの法則が使える。電流を基準にすると、コンデンサーの電圧は $\dfrac\pi2$ 遅れる(下の図)。 $V_{\mathrm R}$ と $V_{\mathrm a}$ は最大になる時刻がずれるが、最大値の比をとるだけなら位相は関係しない。周波数は実験Ⅰの $50\ \mathrm{Hz}$ のまま。

なお、RC 直列回路は本来、電流を基準に抵抗とコンデンサーの電圧を合成してインピーダンスの式を立てる((3) と同じ形)のがよい。ただしこの問題は $V_{\mathrm R}$ と $V_{\mathrm a}$ の最大値を両方与えているので、最大値どうしのオームの法則だけで $C$ が求まる(電圧の合成までは問われていない)。

2024年鹿児島大学医学部物理 第4問 解答の方針の図
2024年鹿児島大学医学部物理 第4問 解答の方針の図
  1. $V_{\mathrm R}$ の最大値 $2.0\ \mathrm{V}$ から、共通の電流の最大値 $I_0=\dfrac{2.0}{R}$ を求める。
  2. $V_{\mathrm a}$ の最大値 $10\ \mathrm{V}$ について $10=\dfrac{1}{\omega C}I_0$ を立て、 $\omega=2\pi\times50$ を入れて $C$ を求める。

【(3)の方針】

着眼点

抵抗・コンデンサー・コイルの直列なので、ここでも電流が共通。電流を $I_0\sin\omega t$ とおき、各素子の電圧を「最大値×sin(位相)」で書いて足す。電流から電圧を求めるので、コンデンサーの電圧は $\dfrac\pi2$ 遅れ、コイルの電圧は $\dfrac\pi2$ 進む。和の振幅を $V=RI$ と見立てると、係数がインピーダンス $Z$(回路全体の抵抗。正確には電圧と電流の最大値の比)になる。共振(電流が最大)は $Z$ が最小のとき。 $R$ は変われないが $\omega L-\dfrac{1}{\omega C}$ は周波数で変われるので、これを0にする。このときコイルとコンデンサーの電圧は同じ大きさで逆向きになり、打ち消し合う(下の図)。

2024年鹿児島大学医学部物理 第4問 解答の方針の図
2024年鹿児島大学医学部物理 第4問 解答の方針の図
  1. 電流を $I_0\sin\omega t$ とおき、 $V_{\mathrm R}$、 $V_{\mathrm C}$、 $V_{\mathrm L}$ を最大値と位相で書いて足し、合成して $Z$ と位相のずれの式を求める。
  2. 共振の条件 $\omega L=\dfrac{1}{\omega C}$ に $\omega=2\pi\times2000$、 $C=5.0\times10^{-6}\ \mathrm{F}$ を入れて $L$ を求める。
  3. $\omega L-\dfrac{1}{\omega C}=0$ を $Z$ と位相のずれの式に入れて、 $Z$ と $\delta$ を求める。

【(4)の方針】

着眼点

(3) の $Z=\sqrt{R^2+\left(\omega L-\dfrac{1}{\omega C}\right)^2}$ は、共振のときに最小値 $R$ をとる。電源の電圧の最大値を変えなければ、電流の最大値 $\dfrac{V_0}{Z}$ は $Z$ が大きくなるほど小さくなる。理由の説明は、(3) の $Z$ の式を示したうえで、「共振で $Z$ が最小値 $R$ をとり、ずらすと大きくなる」「電源電圧の最大値が同じなら電流の最大値は $\dfrac{V_0}{Z}$ 」の2点を順に書けば完成する。

  1. 周波数を共振周波数からずらすと $\omega L-\dfrac{1}{\omega C}\neq0$ となり $Z>R$ になることを示す。
  2. 電源の電圧の最大値が同じなら、電流の最大値は共振のときより小さくなる、と結論する。

解答

2024年鹿児島大学医学部物理 第4問 解答・解説
2024年鹿児島大学医学部物理 第4問 解答・解説
2024年鹿児島大学医学部物理 第4問 解答・解説(続き)
2024年鹿児島大学医学部物理 第4問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

(1) ①

図2から、電圧が0から増え始めて、再び0から増え始めるまでの時間(周期)は $T=0.02\ \mathrm{s}$。周波数は1秒間にくり返す回数なので

$$f=\frac1T=\frac{1}{0.02}=50$$

答 $50\ \mathrm{Hz}$(4点)

(1) ②

(a) が導線なので、回路は抵抗だけ。抵抗の電圧と電流は位相がそろっていて、最大値どうしでオームの法則が成り立つ。図2から $V_{\mathrm R}$ の最大値は $14.1\ \mathrm{V}$ なので

$$I_0=\frac{14.1}{R}=\frac{14.1}{100}=0.141$$

答 $0.14\ \mathrm{A}$(4点)

(1) ③

電力を消費するのは抵抗だけ。電流の実効値は最大値の $\dfrac{1}{\sqrt2}$ 倍なので、最初から実効値を入れて

$$\bar P=R\left(\frac{I_0}{\sqrt2}\right)^2=\frac12RI_0^{\,2}=\frac12\cdot100\cdot\left(\frac{14.1}{100}\right)^2=\frac{14.1^2}{200}\fallingdotseq0.994$$

( $I_0$ は丸めた $0.14$ ではなく、計算前の $\dfrac{14.1}{100}$ のまま入れる)

答 $9.9\times10^{-1}\ \mathrm{W}$(6点)

(2)

(a) にコンデンサーをつなぐと、抵抗とコンデンサーの直列回路になる。直列なので2つに流れる電流は共通で、それを $I=I_0\sin\omega t$ とおく。周波数は実験Ⅰから変えていないので

$$\omega=2\pi f=2\pi\times50=100\pi\ \mathrm{rad/s}$$

交流は最大値と位相を別々に考える。最大値どうしは、抵抗は $R$、コンデンサーはリアクタンス $\dfrac{1}{\omega C}$ を抵抗とみて、オームの法則が成り立つ。

抵抗について、 $V_{\mathrm R}$ の最大値 $=RI_0$ より

$$I_0=\frac{2.0}{100}=2.0\times10^{-2}\ \mathrm{A}$$

コンデンサーについて、 $V_{\mathrm a}$ の最大値 $=\dfrac{1}{\omega C}I_0$ より

$$10=\frac{I_0}{\omega C}\qquad\therefore\ C=\frac{I_0}{10\,\omega}=\frac{2.0\times10^{-2}}{10\times100\pi}=\frac{2.0\times10^{-5}}{\pi}\fallingdotseq6.37\times10^{-6}$$

(位相については、電流を基準にコンデンサーの電圧は $\dfrac\pi2$ 遅れるので、 $V_{\mathrm R}$ と $V_{\mathrm a}$ は最大になる時刻がずれる(下の図)。最大値の比をとるだけなら位相は関係しない。電源の電圧の最大値は $10+2.0=12\ \mathrm{V}$ ではなく、 $\sqrt{10^2+2.0^2}\fallingdotseq10.2\ \mathrm{V}$)

答 $6.4\times10^{-6}\ \mathrm{F}$(10点)

(3)

抵抗・コンデンサー・コイルの直列なので、電流は共通で、それを $I=I_0\sin\omega t$ とおく。各素子の電圧を「最大値×sin(位相)」で書く。電流から電圧を求めるので、コンデンサーの電圧は $\dfrac\pi2$ 遅れ、コイルの電圧は $\dfrac\pi2$ 進む。

$$V_{\mathrm R}=RI_0\sin\omega t,\qquad V_{\mathrm C}=\frac{I_0}{\omega C}\sin\left(\omega t-\frac\pi2\right),\qquad V_{\mathrm L}=\omega LI_0\sin\left(\omega t+\frac\pi2\right)$$

電源の電圧はこの和で

$$V=RI_0\sin\omega t+\left(\omega L-\frac{1}{\omega C}\right)I_0\cos\omega t=I_0\sqrt{R^2+\left(\omega L-\frac{1}{\omega C}\right)^2}\sin(\omega t+\varphi)$$

$$\tan\varphi=\frac{\ \omega L-\dfrac{1}{\omega C}\ }{R}$$

(sin の係数を横、cos の係数を縦にとって合成した)。電源の電圧は電流より $\varphi$ だけ位相が進む、つまり電流は電圧より $\varphi$ 遅れる。振幅を $V=RI$ と見立てると、回路全体の抵抗にあたるインピーダンスは

$$Z=\sqrt{R^2+\left(\omega L-\frac{1}{\omega C}\right)^2}$$

共振周波数は、電流の最大値が最大になる周波数で、 $Z$ が最小のとき。 $R$ は変われないが $\omega L-\dfrac{1}{\omega C}$ は周波数で変われるので、これが0になるとき。 $\omega=2\pi\times2000=4000\pi\ \mathrm{rad/s}$ として

$$\omega L=\frac{1}{\omega C}\qquad\therefore\ L=\frac{1}{\omega^2C}=\frac{1}{(4000\pi)^2\times5.0\times10^{-6}}=\frac{1}{80\pi^2}\fallingdotseq1.27\times10^{-3}$$

答($L$) $1.3\times10^{-3}\ \mathrm{H}$(8点)

共振のとき $\omega L-\dfrac{1}{\omega C}=0$ なので

$$Z=\sqrt{R^2+0^2}=R=100$$

答($Z$) $1.0\times10^{2}\ \Omega$(5点)

同じく $\tan\varphi=0$ より $\varphi=0$。電流は電圧と同じ位相で、位相のずれはない。コイルとコンデンサーの電圧が同じ大きさで逆向きになり打ち消し合うので、電源の電圧は抵抗の電圧だけになる(着眼点の図)。

答($\delta$) $0\ \mathrm{rad}$(5点)

(4)

(3) より、回路のインピーダンスは $Z=\sqrt{R^2+\left(\omega L-\dfrac{1}{\omega C}\right)^2}$。共振周波数では $\omega L-\dfrac{1}{\omega C}=0$ で、 $Z$ は最小値 $R$ をとる。周波数を共振周波数からずらすと $\omega L-\dfrac{1}{\omega C}\neq0$ となり、 $Z>R$ になる。電源の電圧の最大値 $V_0$ を変えなければ、電流の最大値 $\dfrac{V_0}{Z}$ は、共振のときの $\dfrac{V_0}{R}$ より小さくなる(下の図)。

答(増減) 減少する(4点)

答(理由) 回路のインピーダンス $Z=\sqrt{R^2+\left(\omega L-\dfrac{1}{\omega C}\right)^2}$ は共振周波数で最小値 $R$ をとり、周波数をずらすと $Z>R$ になる。電源の電圧の最大値が同じなら、電流の最大値 $\dfrac{V_0}{Z}$ は小さくなるから。(4点)

別解

(1) ③ (瞬間の電力を平均する)  $P=IV=\dfrac{V_0^{\,2}}{R}\sin^2\omega t=\dfrac{V_0^{\,2}}{R}\cdot\dfrac{1-\cos2\omega t}{2}$。 $\cos2\omega t$ は1周期で平均すると0なので、 $\bar P=\dfrac{V_0^{\,2}}{2R}=\dfrac{14.1^2}{200}\fallingdotseq0.994\ \mathrm{W}$。本解の「実効値は2乗の平均の平方根」の確かめにもなる。

(3) (共振周波数の公式)  $f=\dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}}$ を覚えていれば、 $L=\dfrac{1}{(2\pi f)^2C}$ として同じ値がすぐに求まる。導出過程を書く問題なので、本解のように $\omega L=\dfrac{1}{\omega C}$ から書く方が安全。

出題意図

(1) 交流の電圧のグラフから周期と最大値を読み取り、周波数・電流の最大値・平均の消費電力を求めることができるか

(2) 直列回路では電流が共通であることから、最大値どうしのオームの法則でコンデンサーのリアクタンスを求めることができるか

(3) 直列回路の電圧を合成してインピーダンスを表し、共振の条件から自己インダクタンス・インピーダンス・位相のずれを求めることができるか

(4) 共振のときにインピーダンスが最小になる(電流が最大になる)ことが理解できているか

講評

難易度標準
目標得点20点
目標時間25分

交流は苦手な受験生が多いが、やっていること自体はシンプル。
電流を基準にして、最大値と位相を別々に扱う。
この根本の解き方さえ身につければ、(1)(2) は確実に取れ、(3)(4) の RLC 直列回路も同じ考え方で解ける。
交流は、波動や単振動よりずっと易しい分野。
後回しにせず、この解き方を良問の風で身につけておこう。

差がつく所・失点しやすい所

  • 前半の (1)(2) で確実に取れるか:(1) は交流の基本(周期と周波数・最大値どうしのオームの法則・平均の電力は実効値で)、(2) は「直列なので電流が共通」から最大値どうしのオームの法則で $\dfrac{1}{\omega C}=500\ \Omega$ と求めるだけの王道の問題。ここで24点あるので、交流を勉強していれば目標の20点はここで取れる。鹿大の物理で交流が大問になったのは、2007〜2025年の19年分でこの年だけ。
  • (3):RLC 直列回路で、電流を基準に3つの電圧を「最大値×sin(位相)」で足し、インピーダンスの式を作れるか。式ができれば、共振の条件 $\omega L=\dfrac{1}{\omega C}$ から $L$ ・ $Z$ ・ $\delta$ がすぐに求まる。
  • (4) の理由:考察の説明が書きにくい。(3) の $Z$ の式を使って、「 $Z$ は共振で最小値 $R$ をとり、周波数をずらすと大きくなる」「電源電圧の最大値が同じなら電流の最大値は $\dfrac{V_0}{Z}$ 」の2点まで書けるか。

コラム ラジオの選局と共振

(3) で求めた共振の条件 $\omega L=\dfrac{1}{\omega C}$ は、見方を変えると「 $L$ と $C$ を決めれば、電流がいちばん大きくなる周波数が1つに決まる」ということ。(3) は逆向きに、共振周波数 $2000\ \mathrm{Hz}$ と $C=5.0\times10^{-6}\ \mathrm F$ から $L$ を決める問題だった。ここで $C$ をつまみで変えられるようにすれば、大きな電流を取り出す周波数を自分で動かせる。これがラジオの選局のしくみ。

  • (3) とのつながり:共振周波数は $f=\dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}}$ で、 $L$ が一定なら $f$ は $\sqrt C$ に反比例する。日本のAMラジオの局は $531\ \mathrm{kHz}$ から $1602\ \mathrm{kHz}$ まで、 $9\ \mathrm{kHz}$ おきに並んでいる。上の端は下の端の約3倍なので、つまみ1つで全部の局を選ぶには、可変コンデンサー(つまみで極板の重なりを変えるコンデンサー)の $C$ を約 $\dfrac19$ まで変えられればよい。アンテナにはどの局の電波も同時に届いているが、共振周波数に合った局の信号だけが大きく取り出される(実際のラジオのつなぎ方はこの問題の直列とは限らないが、選ばれる周波数はどちらも $f=\dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}}$ )。
  • (4) とのつながり:共振からずれると $Z$ が大きくなり、電流は減る。どれだけ減るかは抵抗で決まる。この大問の回路は $R=100\ \Omega$ と大きく、山はなだらかで、 $2000\ \mathrm{Hz}$ の5倍の $10000\ \mathrm{Hz}$ でも電流の最大値は共振のときの約8割ある( $\omega L-\dfrac{1}{\omega C}\fallingdotseq76\ \Omega$ 、 $Z\fallingdotseq126\ \Omega$ )。抵抗が小さいほど山は鋭く高くなる。となりの局とは $9\ \mathrm{kHz}$ しか離れていないので、ラジオでは山が鋭くないと2つの局が混ざって聞こえる。
2024年鹿児島大学医学部物理 第4問 コラムの図
2024年鹿児島大学医学部物理 第4問 コラムの図

ちなみに、図2から読んだ $50\ \mathrm{Hz}$ は、東日本の家庭用の電気の周波数。鹿児島をふくむ九州や関西などの西日本は $60\ \mathrm{Hz}$ だ(明治時代に東京と大阪が別々の国の発電機を買ったのが始まり)。(4) は「共振からずらすと電流が減る理由」を書かせる記述問題で、「 $Z$ が最小( $=R$ )から大きくなるから」と書けるかで点が分かれる。インピーダンスを抵抗と言いかえて、ラジオの選局と同じしくみだと思って理解しておこう。

2024年鹿児島大学医学部・物理の
講評とまとめ

4問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。

大問難易度目標点
第1問やや簡単50点
第2問やや簡単50点
第3問標準50点
第4問標準20点
合計170点

2025年より明らかに簡単なセット。
第1問・第2問は超典型問題なので、合わせて27分で100点を取り切るのが前提。
第3問は正弦波の式を原点の単振動から導けるか、(3) の合成波のグラフを波の式で書けるかが勝負のポイントで、ここも満点を狙う。
第4問の交流は、前半の (1)(2) が交流の基本だけでできているので、交流を後回しにせず、ここで20点を確実に取る。
目標は第1問〜第3問で満点、第4問で20点の170点。
鹿大の物理は差がつかない科目なので、易しい年ほど、計算ミス1つ・書き忘れ1つがそのまま合否に響く。

解く流れ

  • 第1問 → 第2問 → 第4問 (1)(2) → 第3問 → 第4問 (3)(4)
  • 第1問(12分)・第2問(15分)で100点を取り切る。交流は後回しにせず、第4問の前半 (1)(2) を先に解いて20点を確保してから、第3問(20分)に進む。第4問の (3)(4) は残りの時間で上積みを狙う。目標時間の合計は72分(第4問は前半・後半合わせて25分)。

2024年鹿児島大学医学部・物理に
関するよくある質問

2024年の鹿児島大学医学部・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。

2024年の鹿児島大学医学部・物理は難しかった?

2025年より明らかに易しい「やや簡単」の年でした。
第1問・第2問はやや簡単、第3問・第4問は標準です。
第1問・第2問は超典型問題なので、ここで100点を取り切るのが前提です。

2024年の鹿児島大学医学部・物理は何点取れば合格できる?

目標点は170点です(200点満点)。

2024年の鹿児島大学医学部・物理はどこで差がつく?

第1問・第2問は満点が前提です。そのうえで、差がつくのは次の3つです。

  • 第3問 (3):合成波のグラフで、重なっているのは $\dfrac34\lambda\sim\dfrac54\lambda$ だけと気づけたか。
  • 第4問 (1)(2):交流の基本だけでできる前半で、確実に20点を取れたか。
  • 第2問 (2):吸熱の区間(A→B・B→C)だけを足して $Q_{\mathrm{in}}$ を求められたか。
2024年の鹿児島大学医学部・物理は何が出題された?

大問ごとの単元は、次のとおりです。

  • 第1問:力学
  • 第2問:熱力学
  • 第3問:波動
  • 第4問:電磁気

この記事を書いた人

ラ・サール高校から九州大学医学部医学科へ現役合格。医師国家資格所持するも、多くの受験生を難関大学に合格させるべく教育業界を選択。この度、自分の理想とする教育を生徒に少しでも提供するべく、個人で塾の開校に至る。
現役合格を目指し、熱い想いで指導に携わる。

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